医薬品の個人輸入

通常、海外輸入品は、企業が現地法人や日本国内の代理店等が品物を取り寄せ、国内にて販売を行いますが、『個人輸入』はこれらの企業等を介さず、個人で取引連絡や発注を行い購入することを指します。

インターネットの普及により、海外通販も以前に増して容易となり、利用されている方も多いことと思いますが、輸入しようとする対象によっては気をつけなければいけないことも忘れてはいけません。

個人輸入のルール

医薬品等の輸入については法律によって厳しく規制されています。

この規制の根拠となるのが「薬機法(やっきほう)」という法律で、かつて薬事法と呼ばれていた、薬品や化粧品、健康食品等に関することを定めた法律です。

薬機法で許されるの原則として個人使用を目的とするものに限られ、その数量にも制限があります。
そのため、誰かの代わりに購入することや、大量にまとめ買いを行ったのちに第三者へ譲渡する等の行為は禁じられています。
何度も注文や支払を行うのが面倒だからといって、一度に大量購入し、定められた数量を超過してしまうと没収されることになります。

薬機法に定められた数量制限は下記の通りです。

【医薬品・医薬部外品】

  • 医薬品・医薬外部品(薬局・ドラッグストア等で購入出来るもの)
    2ヵ月分以内まで
  • 外用剤(軟膏・点眼材等)
    1品目24個以内まで
  • 医薬品(国内では医師の処方がないと購入出来ない薬)
    1ヵ月分以内まで

【化粧品】

  • 1品目につき24個まで

この場合の1ヵ月の日数は30日として算出し、医薬品に該当する錠剤(数量制限2ヵ月分以内)を1日2回2錠服用する場合は、(2錠×2回)×30日×2ヵ月=240錠までが購入可能な数量となります。

また、化粧品の24個とは品番やサイズ、色などを全て同一と見なして数えます。
そのため、例えば口紅であれば複数のブランドの商品が数本ずつ、色が違ったとしても「口紅」として一括りでカウントし、24本を超えないよう注意しなくてはいけません。

個人輸入代行サービスとは

海外の企業や店舗と個人で直接取引を行う場合、多くの方が言語の壁に突き当たります。
アメリカの製品を購入しようと思えば英語スキルが、フランスの製品が欲しいと思えばフランス語のスキルが必要になります。

また、文化圏の違いに起因する商品到着の遅滞や誤送のトラブルも多く、問題が発生した際には自らが対応しなければならないなど、ハードルが高いと言えるでしょう。

個人輸入代行サービスは、そういった煩わしいやり取りを肩代わりし、個人輸入の手続きをスムーズに行ってくれるサービスです。
当然、代行手数料がかかりますが、日本語で発注や問合せが出来るうえに、問題が発生した際も対応を任せることができます。

まともな代行業者であれば、日本の薬機法(旧薬事法)に基づき、輸入規制対象の薬物等は一切取り扱うことはありませんので、違反であることを知らずに誤って購入してしまう心配もありません。

個人輸入代行サービスを使う場合の注意

基本的に、個人輸入代行サービスは注文手続きの代行のため、頼んだ商品は海外の発送業者から発送される仕組みになっています。

国内での通販と違って届くまでに1週間程度の時間がかかることは受け入れなければいけません。
また、日本の消費者法も適応されないため、発注に伴う齟齬や誤認があった場合でもクーリングオフは適用外になる点には注意が必要です。

国内未承認医薬品の購入メリット・デメリット

医薬品等の個人輸入には重要なメリットがあります。
それは、日本国内で医師の診断及び処方箋がなければ購入できない医薬品も、処方箋不要で購入可能であるということです。
診断料がかからず、海外でしか販売していない医薬品等も注文可能いうことで、欲しいと思った医薬品を国内で購入するよりも安価で手に入れることが出来ます。

海外ではその有効性や安全性が承認され、広く流通しているにも関わらず、日本国内では購入することができない医薬品は数多く存在します。
それどころか、国内で新しく開発された医薬品が海外で先行して承認・発売され、のちに日本に導入されるケースもあります。

他国で販売された医薬品を自国で承認する際にかかる期間の平均年数は、アメリカで1年2ヶ月、ヨーロッパではほぼ2年以内に対し、日本では4年7ヶ月ととても長い期間が必要となっているのが現状です。

その分安全性のチェックに余念が無いとも言えますが、海外で認められている薬を一刻も早く使用したいと考えている患者さんにしてみれば、国内未承認であるが故に保険適用の対象とならず、自由診療として高額な薬品代を払って購入しなくてはなりません。

また国外で受けた薬物治療を継続する場合などを考慮し、個人使用分に限って規定の数量内であれば厚生労働大臣の許可が無くても特例的に通関のみで輸入することが出来ることとなっています。

但し、個人が処方箋もないままに自由に抗精神病薬やED治療薬を購入出来る現状は、本来のあるべき姿から乖離しています。

それらの輸入品はあくまで国内では未承認の医薬品であることから、使用に伴う健康被害や副作用等に関しては自己責任となることに留意しなくてはいけません。
服用・使用の際には、家族またはかかりつけ医・薬剤師等の専門家に相談するのが良いでしょう。

偽造医薬品の蔓延

医薬品等の個人輸入の際に考えなければいけないのは、その商品が「正規品」であるかどうかということです。
世界保健機関(WHO)は、故意または詐欺の目的をもって内容や出所・起源に関して偽表示された医薬品を「偽造医薬品」と定めています。

これらの偽造医薬品は、有効成分を全く含有していなかったり、有害物質を含んでいたり、添付文書に虚偽の記載があったりします。
中には、外箱は本物で中身だけが偽物の場合も存在しています。

そのため効能・効果、用法・用量などの安全性が担保出来ず、偽造医薬品を使用または服用すると重大な健康被害が発生する恐れがあります。

このような偽造医薬品の流通は全世界に広がっており、その流通量は750億ドルにも達していると言われています。

さらに途上国では医薬品の流通量のうち3割が偽造医薬品であるなど非常に深刻な問題となっています。
日本国内でも2017年に奈良県にある薬局からC型肝炎治療薬の偽造品が出回るなどの事件が発生しました。

厚生労働省は医療用医薬品の流通経路について、取引時の本人確認を厳格化するなど再発防止に取り組むと同時に、個人輸入についても注意喚起を行っています。